1970~80年代のホンダ・スーパーカブ70、いわゆる「カモメカブ」のC70は、現在でも楽しめる魅力的な旧車です。一方、坂道や二人乗りなどでは、現代の交通環境に対してもう少しトルクが欲しいと感じることがあります。そこで候補になるのが85cc前後、あるいは88ccへのボアアップです。
ただし、6V時代のC70は「横型エンジンだからモンキー用88ccキットを買えば付く」というほど単純ではありません。6V・12Vの違いだけでなく、C70純正ヘッドの燃焼室、ピストン形状、シリンダー寸法、年式・エンジン型式まで確認して部品を選ぶ必要があります。
この記事では、6V前期型C70を85~88cc程度へボアアップするときの考え方と、部品選びで特に注意したいポイントを整理します。なお、旧車は過去の修理でエンジンやヘッドが交換されている場合もあるため、最終的な適合は現車確認とメーカー・専門店への照会を前提としてください。
カモメカブC70はもともと約72ccのエンジン
スーパーカブC70は名称こそ「70」ですが、代表的な仕様では排気量は約72ccです。そのため、50ccのカブを75ccや88ccにする場合とは出発点が異なります。
例えば72ccから88ccへの変更なら、排気量の増加率は約22%です。数字だけを見ると極端な変更ではありませんが、ボア径が変われば燃焼室との関係、圧縮比、燃料供給量、発熱量なども変化します。単に大きなシリンダーとピストンを装着すれば完成、とは考えない方が安全です。
特に古いC70では、ボアアップ以前に圧縮低下、キャブレターの不調、点火時期、クラッチの滑り、マフラー内部の詰まりなどによって坂道で力が出ていないケースもあります。まずノーマル状態が本来の性能を発揮しているか確認することが重要です。
6V前期C70に「12Vカブ70用88ccキット」をそのまま選ばない
部品を探していると「カブ70用88cc」という商品が見つかることがあります。しかし、商品名だけで判断してはいけません。実際にC70/C90純正ヘッドを利用する88ccキットとして販売されている製品でも、適合が12Vスーパーカブ70に限定されているものがあります。
例えばカブ専門店Cubyが扱う「カブ70用88ccボアアップキット」は、カブ70・90系純正ヘッドを生かす構成ですが、適合欄には12Vスーパーカブ70と明記されています。したがって、6V前期C70だからという理由だけで、この種の12V用セットをそのまま注文するのは避けるべきです。[参照]
6V時代と12V時代の横型エンジンでは、部品によってピストンやヘッドとの組み合わせが異なります。6Vカモメカブのボアアップ事例でも、12V車用とはピストン形状などが異なるため、車体・エンジンの仕様を確認して適合品を選ぶ必要性が指摘されています。
「6Vモンキー用88cc」もC70に自動的に適合するわけではない
もう一つ注意したいのが、ネット通販で多数販売されている「6Vモンキー用88cc」「モンキー・ゴリラ用88cc」というキットです。同じホンダ横型エンジンなので流用できそうに見えますが、6V対応という表示だけではC70への適合を保証できません。
例えばデイトナには6V・12Vモンキー/ゴリラのノーマルヘッド対応88ccキットがありますが、メーカーが示す対象車種はあくまでモンキーです。[参照] また、SP武川にも6V DAX70用として純正シリンダーヘッドとクランクシャフトを利用できる88ccキットがありますが、こちらも適合するフレーム番号が具体的に指定されています。[参照]
つまり「6V」「70cc」「ホンダ横型」という条件が似ていても、C70に無加工で適合するとは限りません。ピストン上面の形状やバルブとのクリアランスなどが合わなければ、最悪の場合はピストンとバルブが干渉してエンジンを損傷する可能性があります。
C70純正ヘッドを残して88cc化したい場合の部品選び
6V前期C70の純正ヘッドをそのまま使いたい場合は、単純に「88cc」という排気量で探すより、「そのC70ヘッド+純正クランクの組み合わせに適合するピストンとシリンダー」を探すのが基本です。
旧型C70では仕様の違いが多いうえ、中古車の場合は数十年間の間に別年式のヘッドやエンジンへ交換されている可能性もあります。購入前には少なくとも次の情報を確認しておくと、専門店に相談しやすくなります。
- 車体番号
- エンジン番号・エンジン型式
- 6Vポイント点火か、別仕様へ変更されていないか
- シリンダーヘッドの刻印・形状
- 現在のシリンダーとピストンが純正か
- 過去にエンジン載せ替えが行われていないか
特に古いカブでは「車体はカモメC70だがエンジンは後年のもの」という個体も珍しくありません。その場合、車体年式だけを基準にキットを注文すると適合判断を誤ります。
85cc・88ccにする前に坂道でパワーがない原因を確認する
坂道を登らないからといって、必ずしも排気量不足とは限りません。C70は古い個体では40年以上経過しているため、エンジン本来の性能が失われている可能性があります。
例えばピストンリングやシリンダーが摩耗して圧縮圧力が低下していれば、排気量を増やす以前に腰上の整備が必要です。また、キャブレターの詰まりや燃調不良、エアクリーナーの汚れ、点火系の劣化、マフラーのカーボン堆積などでも登坂性能は悪化します。
さらに遠心クラッチが滑っている場合、エンジンの回転数だけ上昇して駆動力が後輪へ十分伝わりません。「エンジンは吹けるのに坂で速度が落ちる」「回転だけ上がる」という症状ならクラッチも確認対象です。
88cc化するとキャブレター調整やクラッチ対策も必要になる
ボアアップ後は吸い込む空気量が増えるため、ノーマルの燃料設定のままでは混合気が薄くなる可能性があります。メインジェットなどを含めたキャブレターセッティングを行い、プラグの状態やエンジン温度を確認しながら調整する必要があります。
実際、カブ70用88ccキットを扱う専門店でも、燃料供給の適正なセットアップに加えて、強化オイルポンプや強化クラッチなどの併用を推奨しています。排気量を増やすということは、それだけエンジンや駆動系に掛かる負担も変化するということです。[参照]
坂道を楽に登りたいことが目的なら、最高回転数を追求したチューニングよりも、低中速トルク、キャブセッティング、スプロケット比、クラッチの状態を含めてトータルで仕上げた方が乗りやすいカブになります。
ボアアップすると原付二種としての変更手続きも確認する
もともとのC70は50cc超の原付二種ですが、排気量を72ccから85ccや88ccへ変更した場合、登録されている排気量と実際の排気量が変わります。自治体で必要となる手続きについて事前に確認しておく必要があります。
また、自賠責保険や任意保険についても、登録内容の変更によって連絡が必要になる場合があります。特に任意保険をファミリーバイク特約などでカバーしている場合は、改造後も補償条件を満たしているか保険会社へ確認しておくと安心です。
エンジン改造は「部品が装着できるか」だけでは完結しません。公道で使用するなら、登録、保険、安全性まで含めて考える必要があります。
旧型C70では専門店に現物を見てもらうのが確実
6V前期C70は、現在のようにメーカーが車種別ボアアップキットを豊富にラインアップしている世代ではありません。そのため、現行商品から単純に品番を一つ選ぶより、C70のエンジンに詳しいカブ・4ミニ専門店へ相談して部品を組み合わせてもらう方法が現実的です。
相談するときには「カモメカブです」だけではなく、車体番号、エンジン番号、ヘッドの刻印と写真、現在のボア・ストロークが分かればそれらも伝えます。そのうえで「純正C70ヘッドを残し、純正クランクで85~88cc程度にしたい」と希望を伝えると話が通じやすくなります。
特にピストンとバルブのクリアランス、圧縮比、シリンダースリーブとクランクケースのクリアランスなどは、組み付け時に実測して確認するのが安全です。適合表にない部品を「たぶん付く」で組むのは避けた方がよいでしょう。
まとめ:6V前期C70の88cc化は「排気量」よりヘッドとの適合が重要
カモメカブC70を85cc・88cc程度へボアアップすること自体は、過去にもさまざまな方法で行われています。しかし、6V前期C70に使えるキットを選ぶ際は、12Vカブ70用や6Vモンキー用という名称だけで判断しないことが重要です。
特に純正C70ヘッドを残す場合は、ヘッドの燃焼室とピストン形状、バルブクリアランス、クランクとの組み合わせまで適合させる必要があります。まず車体番号・エンジン番号・ヘッドを特定し、その仕様を伝えてカブ系エンジンに詳しい専門店へ相談するのが確実です。
また、坂道で極端に力がない個体では、ボアアップ前に圧縮、キャブレター、点火、マフラー、クラッチなどを点検してみる価値があります。ノーマル72ccをきちんと整備しただけで走りが大幅に改善することもあります。そのうえでトルク不足を感じるなら、適切な88cc化と燃調・クラッチ・駆動系のセットアップを一体として検討すると、旧いC70の魅力を残しながら扱いやすい仕様に仕上げやすくなります。


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